教員採用試験の論作文・小論文は面接や集団討論と同じく、合否を分ける重要な人物試験です。
教員採用試験の論作文・小論文は、一般の採用試験とは違った「独特のクセ」があるのはご存知でしょうか。
この記事でご紹介している「独特のクセ」を理解し、書き方(コツ)を実践できれば、教採で合格できる論作文・小論文を書くのは難しいことではなくなるでしょう。
本記事では、模範解答を例文にした解説も掲載しています。
ぜひ参考にしていただき、教員採用試験の合格を実現させてください。
目次
教員採用試験・論作文の「独特のクセ」と「対応方法」
教員採用試験の論作文・小論文試験は「独特のクセ」があります。
まずはその「独特のクセ」とそれに対応するために必要な「対応方法」についてご紹介します。
①教採の論作文・小論文「独特のクセ」とは?
教員採用試験の論作文や小論文にある「独特のクセ」とは
です。
「現実論」とは、教育現場を知る者(採点官)が読んだ時に
と、共感してもらえる「現実的な課題」や「課題に対する実現可能な実践」のことです。
教員採用試験の論作文・小論文試験では、他の採用試験では高評価の対象となる「独創性」や「オリジナリティ」は要りません。
なぜなら、教員採用試験そのものが研修ナシでも教壇に立てる「即戦力」を探すための試験。言い換えると、教員採用試験は1000人に1人の超優秀な人を探すための試験ではなく、5人に1人はいる「無難に4月から教壇に立てる人」を探すための試験だからです。
なので
逆に、独創性やオリジナリティといった現実知らずの「お花畑的な“理想論”」は不要です。
もし「お花畑的な”理想論” 」を述べた論作文を書いてしまったら
と思われてしまい、低評価をつけられかねません。
教員採用試験の論作文・小論文は「現実論」で攻める ことを徹底してください。
②「”現実論”を述べる力」をつける方法
次に、「現実論を述べるべき」という教採の論作文・小論文のクセへの「対応方法」として「”現実論”を述べる力」をつける方法についてご紹介します。
論作文・小論文の答案を書く時に、次の3点を示せるようにしましょう。
- 国の教育方針を理解できていること
- 教育現場の現状を理解できていること
- 今すぐ「実現可能な教育活動」を選択できる価値観や考えを持っていること
①は答申や文科省関連の報告書など、教職教養試験で出題される可能性の高い資料に目を通し、内容を理解しておくと良いでしょう。
②と③は、学校教育の現実を知ることが大切です。
そのためにできることは
現実を知るのに、現場での実体験に勝るものはありません。
と言うと、新卒の学生や社会人からの転職組は講師経験を積むことができません。
でも、心配は要りません。
教採本番までに講師経験を積めない方は
疑似体験とは、教育に関する本、雑誌、インターネットで閲覧できるブログや動画などを通して「学校教育の現状」について知ることです。
「疑似体験」の方法については コチラの記事 に詳しく書いていますので参考にしてください。
教員採用試験・論作文の「型」を身につけよう
教員採用試験の論作文・小論文にある「独特のクセ」とその対応方法は理解いただけましたか?
では、もうひとつ、大切な「コツ」をお伝えします。
それは
です。
③「型」にハメて受験者平均を確保する
教員採用試験の論作文・小論文試験で合格ラインを超えるために
を大切にしてください。
教員採用試験で合格する確率をアップさせるためには、すべての試験科目において「受験者平均をクリアすること」が大切です。
特に教員採用試験の論作文・小論文を苦手としている人は、イッキに5段階のトップ評価(A評価)を目指すのではなく、まずは受験者平均をクリアして合格ラインを確保する(C~B評価をもらう)ことを目標にしましょう。
教員採用試験では、合格力を持つ受験生の多くが「型」どおりに書いてきます。
なぜなら、教採大手予備校から有名な教採雑誌に至るまで、どこもかしこも
という指導をされているからです。
ということは、この「型」どおりに書くことは、没個性的になります。しかし、採点官にとって「読みやすさ」が増すメリットがあります。
先にも述べたように、教員採用試験は「独創性・個性よりも現実論」が重視されます。
答案の内容が現実的であれば、ある程度の評価をもらえる試験です。なので敢えて「型」にハメて、余計な減点を防ぐようにしましょう。
教員採用試験 論作文・小論文の「型」とは?(模範解答あり)
教員採用試験の論作文・小論文の「型」について具体的に説明します。
主に以下の3つを挙げることができます。
- 「序論⇒本論①⇒本論②⇒結論」の4段構成
- 語尾は「~だ」「~である」で統一
- 文字数の目安は指定の9割
④「序論⇒本論①⇒本論②⇒結論」の4段構成
教員採用試験の論作文・小論文で理想とされる構成は決まっています。
その証拠に、市販されている教採攻略本から、教採雑誌、予備校のサイト、他のブログに至るまで「同じこと」が紹介されています。
論作文・小論文の4段階構成
教員採用試験の論作文・小論文の構成は
にすると良いでしょう。
基本的に、指定の文字数に関係なく「4段階構成」で書くのが理想です。
- 1000文字であれば、1段落あたり250文字。
- 800文字であれば、1段落あたり200文字。
文章の内容によって文字数のバランスが前後するのは全く問題ありません。
例えば、指定の文字数が1000字であれば
- 序論:200 本論①:300 本論②:300 結論:200
- 序論:150 本論①:300 本論②:300 結論:250
- 序論:250 本論①:300 本論②:300 結論:200
など、多少前後しても全く問題ありません。
ただし、バランスを崩しすぎると読み手の印象を悪くする恐れがあります。各段落の文字数バランスの変動は、できれば10~20%前後に収めたいところです。
実際に、私が複数の受験指導のプロからA評価をいただいた論作文の文字数バランスは
- 「課題A」序論:210 本論①:298 本論②:287 結論:114 計:909字
- 「課題B」序論:94 本論①:416 本論②:319 結論:144 計:973字
など、決して4等分されたバランスではありませんでした。
課題Bについては、はじめとおわりが少なすぎる印象がありますが、3名のプロの方に添削評価してもらったものの中で最高評価(ほぼ満点)をいただきました。
あくまでバランスは目安です。
型にこだわり過ぎて伝えたいことが伝えられない・・・ということのないようにしましょう。
各段落の内容(模範解答)
4段階で構成される各段落の内容は、以下に示したような内容を心がけると良いでしょう。
テーマは「教師に求められる資質」です。
<序論の書き方ポイント>
テーマについて、社会的な背景・課題・取り組むべき方向性や考えについて書きましょう。
<文例>
私たちに求められている資質や能力には、教育者としての使命感や人間の成長・発達についての深い理解、生徒・児童に対する教育的愛情、教科等に関する専門的知識、広く豊かな教養、これらを基盤とした実践的指導力などがある。しかし、それらの原点はすべて子どもの視点に立つことだと考える。子どもの視点に立てば、私たちに求められている事が見えてくる。子どもたちだけでなく保護者や地域から信頼される教師になるために、私は以下の取り組みを実践する。
<本論①の書き方ポイント>
「序論」で述べた内容に沿って、テーマに関する問題点の解決案を「自分が教師として実践すること」を前提にして、ひとつ具体的に述べましょう。
※この際「私が教師になった時には~」といった書き出しは不要。すでに教師であることを前提に「私はこうする」といったスタンスで書くのが教採論作文のコツです。
※各段落の前に「1.授業を充実させる努力をする」「2.叱ることよりもほめることを重視する」とタイトル付けをして、読み手が読みやすくなる工夫をするのも良いでしょう。
<文例>
第一に、努力をする。特に授業を充実させる努力をする。子どもたちにとって授業は学校生活の大部分を占める。授業を充実させることは子ども達の心の安定をもたらし、日常生活全体に良い循環をもたらすと考える。そのためには、子どもたちの実態把握やそれに基づく教材研究といった「準備」と授業後の「反省」に力を入れる。特に「準備」については、子ども達の興味・関心を惹くための創意工夫をする。例えば、立方体の導入でさまざまな大きさの直方体と立方体のモデルを用意する。そして、手触りだけでどちらかを当てるゲームをする。このような教材との出会いにおける工夫が、子どもたちによる直方体と立方体の違いの理解を助けると考える。
<本論②の書き方ポイント>
「本論①」と同様に、実践のふたつめを具体的に述べましょう。
<文例>
第二に、叱ることよりほめることを重視する。例えば、掃除をやらない子どもの指導については、その行為を叱るのだが、その場ではできるだけ簡潔に叱る。皆の前であれば当然のこと、そうでなくとも長い間、自分の行為について否定的な話をされると冷静に判断、理解できないことがあるからだ。そして、まじめに掃除をする子をほめる。ほめる時はみんなの前でほめる。同時に「どうして良いのか」を、学級全体で考えて学級の総意として掃除をする子の良さを認める。それは、掃除をする子に自信を持たせると同時に、話し合いを通して、掃除をやらない子どもたちに「掃除をすることの意義」を素直に伝えられると考えている。
<結論の書き方ポイント>
上3段で述べてきたことのまとめや補足、教師として真摯に熱心に取り組んでいく強い気持ちや決意を書くと良いでしょう。
<文例>
以上、私の考えを述べてきたが、仕事を進める上で、目的と手段を履き違えない事も大切である。これは8年間の社会経験から学んだことのうちのひとつである。何をするにおいても「子どもにとってどうなのか」を基準にして考え、努力していきたい。
⑤語尾は「~だ」「~である」で統一
文末や語尾は「~だ」「~である」で統一する書き方が無難です。
「~です」「~ます」では意志の弱い印象になるからか、教採の論作文・小論文対策の本やプロからの指導でも「~だ」「~である」で統一するほうが良いと言われています。
という人もいると思いますが、ココは無難に「~だ」「~である」と表現する書き方に慣れましょう。
⑥文字数の目安は指定の9割
教員採用試験の論作文・小論文の文字数は
例えば
- 指定文字数が1000字であれば900字以上
- 指定文字数が800字であれば720字以上
ですね。
印象レベルの話ではありますが、最後までビッシリと詰まっているのと、後ろ3行くらい何も書いていないのとでは大きな違いがあります。
どれだけ内容が良くても、1000字中200字分も空欄があると採点官は内容通りの評価を下しにくくなるものです。
試験で指定される最大文字数の9割以上を目指して書いてください。
「印象を良くする論作文の書き方」をマスターしよう
教員採用試験の論作文・小論文試験では、内容以外でも以下のような点で「印象を良くするための書き方」をマスターしましょう。
- 丁寧で読みやすい字を書く
- 最終行まで埋める努力をする
- キーワードや教育用語を盛り込む
- 端的で読みやすい文章にする
⑦丁寧で読みやすい字を書く
論作文・小論文で書く文字は、達筆である必要はありません。
採点官が解答用紙を読む際に、ストレスを感じない字が理想です。
どのあたりから「クセ」とするかは判断の難しいところですが、いわゆる女子中高生などにありがちな「マル字」や極端に形を崩したファッション的な文字は避けたいところです。
⑧最終行まで埋める努力をする
先に述べた「文字数」につながる話ですが
理想は先述したとおり、指定文字数の9割は押さえたいですね。
シッカリと埋められた解答用紙は、採点官がパッと見たときの第一印象が良くなります。
絶対的に守るべきことではありませんが、可能な限り最終行まで埋める努力はしましょう。
⑨キーワードや教育用語を盛り込む
教員採用試験の論作文・小論文を書く時は
と良いでしょう。
普段、教育への関心の低い人が、その場しのぎで教育について語るレベルで論じていてはダメです。
教育への関心の低い人が書く文章との差別化のために、※キーワード や教育用語をサラッと使えるようにしましょう。
例えば、上記の例文の中であれば以下の言葉がそれにあたります。
- 使命感
- 発達についての理解
- 専門的知識
- 実践的指導力
- 子どもの視点に立つこと
- 信頼される教師
- 心の安定
- 良さを認める
- 自信を持たせる(自尊感情を高める)
- 実態(の)把握
- 子ども(「ども」を平仮名で)
- 興味・関心
- 創意工夫
- 行為
- 障がい者
これらの用語は、教育に携わっていない人はあまり使わない言葉です。
「子ども」のような、誰でも使う言葉でも「子供」とは書かないところがポイントです。
こういった教育への意識の高さを匂わせる言葉をサラっと使えるようになるためには、それなりの積み重ねが必要です。
以下に、そのためのコツをいくつか紹介しておきます。
- 教採対策を通して「教職教養」への理解を深める。
- 授業の「指導案」に触れておく。
- 評価の高い論作文や「教員養成セミナー」などの教育雑誌を読む。
⑩端的で読みやすい文章にしよう
教員採用試験の論作文・小論文試験では、採点官が「読みやすい」と感じる文章を書きましょう。
そのためには
が理想です。
端的であるというのは、文章のスタートから文末の「〇:句点」までが長くないことです。
例えば、先にご紹介した論作文・小論文の文例に以下のような文章がありました。
しかし、それらの原点はすべて子どもの視点に立つことだと考える。子どもの視点に立てば、私たちに求められている事が見えてくる。子どもたちだけでなく保護者や地域から信頼される教師になるために、私は以下の取り組みを実践する。
このように「〇:句点」を多用し、短い文章で終わらせるのが、端的な文章にする書き方のコツです。
逆に、同じ内容の文章が以下のような書き方になると「冗長」になってしまい、理解しにくい文章になります。
しかし、それらの原点はすべて子どもの視点に立つことだと考えるし、子どもの視点に立てば、私たちに求められている事が見えてくるので、子どもたちだけでなく保護者や地域から信頼される教師になるために、私は以下の取り組みを実践する。
文章が「冗長」になると、言いたいことが分かりにくくなり、読んでいる側にとってストレスです。
リズム良く、ひとつひとつの文章の意味がスッと頭の中に入ってくるような文章を書くためには「端的な文章にするコト」がコツです。
まとめ:教員採用試験の論作文・小論文は「独特のクセ」に合わせた書き方で対策を
教員採用試験の書き方は論作文・小論文に限らず「独特のクセ」があります。
「即戦力」を求める教員採用試験の目的を考えれば当然のことです。
「即戦力」になれそうにない人は、残念ながら落とされて当然の試験なのです。
逆に言うと「独特のクセ」があることは対策しやすいと言うこともできます。
シッカリと、教員採用試験の方向性や独特のクセに合わせた書き方をマスターするための対策を積み重ねて、来夏の教員採用試験に備えましょう。
頑張ってくださいね。
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