さて、新年度が始まると「家庭訪問」がやってきます。
という方のために、10分で分かる家庭訪問のノウハウをまとめました。
服装や挨拶はモチロン、家庭訪問で役に立つグッズまで紹介しています。
- 先輩教師に聞かずに「家庭訪問」の基本を知りたい新任教師。
- 家庭訪問を相手(保護者)に不快感を与えることなく進めたい教師。
- 忙しい中、未知の家庭訪問への見通しを立てて、気持ちを楽にしたい教師。
目次
新年度早々の忙しさの中、家庭訪問は「トドメの一発」
新年度、学級開きに始まり、遠足準備、授業参観、PTA総会などなど・・・年度始めの教員は毎日目が回る忙しさです。
そこに春の家庭訪問は、多忙を極めクタクタになる中での「トドメの一発」。
そんな中、先輩に聞く余裕もない新任教師のみなさまに向けた本記事「初めての家庭訪問マニュアル」を参考にして、このヤマを乗り切ってもらえたらと思います。
家庭訪問での「服装や態度」
新任教師の皆さんに限らず、春の家庭訪問は保護者との初対面の機会になります。
保護者と直接会う機会はそう多くありません(無いほうがいい)ので、この家庭訪問は、今後の学級運営を安定させるためにも大切なイベントです。
第一印象を良くするために、まずは「服装や態度」に気をつけましょう。
そこで
服装や態度で自分色(個性)を出しすぎて、違和感や反感などの「誤解」を持たれないようにしましょう。
服装について
服装は「正装」が基本です。
特に男性の場合はトレンドを追わず、以下のような標準的かつ地味な服装を心がけましょう。
- スーツ:黒、グレー、紺色のシングルタイプ
- ネクタイ:色・柄が派手にならないよう気を付ける(結び方も標準的なスタイルに)
- シャツ:白色の柄無しが理想。あっても白地に薄いストライプ程度。
- 靴:黒の革靴
女性の場合は、同じくスーツが望ましいですが、男性よりは選択肢は幅広いです。私服であっても、派手でなければ問題ない学校があります。
そのあたりは学校や地域によって違います。
スーツ以外で考えているのであれば、そこは勤務先の先輩教員や管理職に確認してみましょう。
表情や態度について
表情は笑顔が基本ですが、何事も笑顔ではイタダケません。表情にはメリハリを出しましょう。
話の内容によっては真剣な表情で向き合うことが大切です。
笑顔も「自然な笑顔」を保つようにしましょう。
慣れない人は、相手が気持ち悪くなる程の「満面の笑み」を終始続けてしまうことがあります。それでは逆に「変わった人」というイメージを持たれかねません。
「自然な笑顔」を保てるよう気をつけましょう。
動作も、基本的には常に背筋を伸ばすイメージで、凛とした態度を心がけましょう。
お辞儀は「斜め45度」など、型にはまった正確さは不要です。しかし、頭を下げた時に一旦止めるなど、礼儀正しさが自然と伝わるよう心掛けると良いでしょう。
また、話が終わって家を出る際に、話をしたご家族以外の方と顔を合わせることがあれば
と、ひとこと伝えられると良いでしょう。
家庭訪問での「保護者との面談中」に気をつけるべきコト
春の家庭訪問は、基本的に保護者の話を聞くことが中心になります。
教師側が自分の思いを熱心に語らなくても「真剣に聞いてるからね!」というメッセージを態度で示すだけで
と好印象を持ってもらえます。
そこで、私だいぶつが家庭訪問で心がけている「語らずして熱心さを伝えるコツ」をいくつかご紹介します。
視線は目を見て相槌をうつ
保護者が話をしている時は、シッカリと保護者の目を見て、相槌をうちながら聞きましょう。そして、真剣に聞いている印象を持ってもらえるようにしたいですね。
話をするときも同じで、基本的には保護者の目を見て話をすることを心がけます。
相槌については、タイミングやペースが単調にならないようにしましょう。
相槌をうつのに慣れていない人は
- 無言で首をタテに振る相槌
- “はい”と返事を入れながらの相槌
- “そうなんですね”と返事を入れながらの相槌
を適度に混ぜるように意識すると良いでしょう。割合は「3:6:1」くらいが理想的だと思います。
「オウム返し」を心がける
保護者の話を聞いている時は、相槌ばかりでは単調になり逆に変な印象を与えかねません。
時々「オウム返し」を入れて、会話に自然なリズムが出るように心がけましょう。
「オウム返し」というのは、保護者の話を鳥のオウムのように繰り返す、コミュニケーションの基本技術のひとつです。
繰り返すと言っても、そのまま全部繰り返してはいけません。
こんな感じです。
大切な話はこちらからの質問や確認を
保護者からの要望や相談などの大切な話については、こちらからもいくつか質問をして充分に聞き出すようにしましょう。
無理に質問を出さなくても、大切な話を自分が理解しているかどうかを確認するための内容確認(復唱)でも良いでしょう。
メモは重要でなければ後にする
何でもかんでもメモを取とうとすのはやめましょう。
メモを取ると、どうしてもメモ取りが中心になります。すると、保護者にも話をするペースに気を遣わせてしまう場合があります。
メモは家庭訪問終わった後に外で要点だけをメモし、職場に戻ってからメモを頼りにまとめ直すのが良いでしょう。
ただし、アレルギーやいじめなどの重要な話は、その場で話を聞きながらメモを取るようにしましょう。
なので、基本的にはノートと筆記用具は持参して、膝の上に置きながら話をするようにしましょう。
家庭訪問の「流れ」と押さえたい「会話のネタ」
初めて教師の立場で家庭訪問を経験する方は「どのタイミングで何を言っていいのか分からない」と不安になる人もいるでしょう。
なので、いくつかの決めゼリフ的なものを場面に分けて紹介しておきます。
はじめ
最初に出会った時は、しっかり挨拶をしましょう。
普通ですが、これで十分です。
家に上がる
当たり前の話ですが、保護者に
と言われるまでは家に上がりません。
時々、それっぽい会話がなく保護者が中に入ってしまわれることがあります。その場合は数秒置いて
おじゃましてよろしいでしょうか
と声をかけましょう。
すると
と言われます。
何事も自分で判断せずに、言葉のキャッチボールで丁寧に確認しながら進めましょう。
座る
家庭訪問は、ほとんどの場合にリビングやキッチンの椅子か座敷に座らせていただきながら話をします。
その場合も自分から座りません。
保護者から「こちらへどうぞ」的な話があるまで、椅子や机の横で待ちます。
座る前は保護者からの声掛けが無くても「どちらに座れば良いでしょうか」とは言わないようにしましょう。
挨拶第二弾
お互いが座って話を始めるにあたっては、頭を下げて再度挨拶をしましょう。
と、重ねて自己紹介から話を始めると丁寧に聞こえますし、自然に話を進めやすくなります。
話始め
話の始めは「子供の学校での様子を簡単に話をする」のが良いでしょう。
などなど、簡単でいいので子どもの学級での様子を話するのが良いでしょう。
これらを話せるようにするためには、話のネタを持っていないといけません。 日頃から教師用の児童カルテ的なものを作っておいて、メモをマメに残しておきましょう。
それができていなければ、家庭訪問当日に、訪問予定の子どもの様子を学校にいる間に観察したり、声をかけてコミュニケーションを取ってみたりすると良いでしょう。
このレベルのネタであれば、子どもとたちとのチョットした会話で聞き出せますね。
どうしてもネタが無い時は、家の中で飾られている子どもの写真や花、天気の話でも構いません。 しかし、できれば子どもの話をして「自分の子どものことを見てもらえているな」という印象を保護者に持ってもらいたいですね。
もし、PTAの役員が決まっている場合には、その事を話始めのネタにしても良いでしょう。
といった感じで話ができれば無難ですね。
会話のネタ
「何の話をすればいいのか分かりません・・・」とお悩みの先生方、家庭訪問は「話す」よりも「聞く」ほうを重視してください。
どれだけ世話のかかる子どもの家であっても、最初の家庭訪問は「話すこと」よりも「聞くこと」を重視しましょう。
で、何を聞くのか。
せっかくなので、学校で見られない子どもの様子を聞くようにしましょう。
- 新しい学年になってから、〇〇さん、家で何かお話されてますか?
- 新しい学級になって何か変わったことはありませんか?
- 家では普段どんな遊びをされてるんですか?
- 習い物は何をされていますか?
- 何か不安なことや困ってらっしゃることはありませんか?
これらの質問で話を聞いている間に10分~15分はすぐに終わります。 それにあわせて「学校では・・・な感じですよ」とお互いに知っている子どもの様子を情報交換できれば、話に広がりが出て理想的です。
ココでも子どもたちの学級でのエピソードをネタとして持っておくと良いですね。 そのためにはやっぱり日頃からの子ども観察とメモが大切でしょう。
終わり
自分から話を切ることができそうであれば
と切り上げればよいでしょう。
もし、話が長くて終われそうにない時は
と伝え、改めて学校から電話をする約束をするなど、後につながる形で終えられると良いでしょう。
お別れの挨拶
玄関で靴を履いた後、再度挨拶をしましょう。
くらいの挨拶が最後にできればOKです。
その前の挨拶と内容が丸被りしないよう、いくつかバリエーションを持っていると良いでしょう。
ていると良いでしょう。
家庭訪問での「持ち物」
最後に、家庭訪問の際に必要となる「持ち物(グッズ)」をご紹介します。
持ち物ひとつで、家庭訪問でのピンチを防いだり、切り抜けられたりすることがあります。
地図
家庭訪問に地図は必需品です。
一軒一軒の家や世帯主の名前が載っている地図が学校にあれば、それを自分用にコピーして、マーカーで印をすると良いでしょう。
モチロン、スマートフォンの地図アプリで訪問予定の家に印をつけておいてもOKですね。
春先に保護者に書いてもらう「児童カルテ」的なモノに、学校から家までの道のりが書かれていますが、分りにくいモノが多いです。
「児童カルテ」的なモノを回収したら、それを参考に「分かりやすい地図」を自分で準備して、そこに印を付けたり、スマホアプリチェックするなどの準備をしましょう。
家庭訪問スケジュール
どの教員も、家庭訪問のスケジュールを時間割のようにした表を作るかと思います。
それをひとつコピーして持参しておいたり、スマホデータで見られるようにしておくなどしておきましょう。
腕時計
腕時計も必要です。
家庭訪問は常に時間を意識して動きます。スマホの時計ではなくて、時刻を確認したいときに一瞬で確認できる腕時計が最強です。
保護者と話をしている間も、腕時計なら自然な動作の中で失礼なく時刻を確認することができますね。
スマートフォン&ワイヤレスイヤホン
家庭訪問は、まず予定した時間通りに進みません。
なぜなら、予定より話が長くなってしまう家庭が必ずあるからです。
そして、約束の時刻に遅れそうになった時、前もって遅れる家庭へ連絡の電話を入れるのにスマートフォンは必ず使います。
時間を作って待ってもらっている保護者に、待ちぼうけさせてはいけません。
そして、保護者に電話連絡をする際にBluetoothのワイヤレスイヤホンがあれば超絶便利です。
ワイヤレスイヤホンがあれば、両手を使わずに電話(ハンズフリー通話)ができるので、移動や作業をしながら連絡ができ、時間をムダにしません。
無くしてしまうのが不安な方は、首掛けタイプもあります。
ノート&筆記用具
先ほども触れましたが、必要に応じてメモが必要な時に使います。
保護者と話をする時はよほど重要な話でなければメモは取りませんが、持っていくと「メモを取る準備がある」と熱心さをさり気なくアピールできます。
教務必携を持ち込むのもアリですが、教務必携は様々な個人情報が入っているので家庭訪問用にメモ帳(ノート)を準備しておいても良いでしょう。
防臭グッズ
体臭が気になる方は、絶対に対策をして家庭訪問に臨みましょう。
臭い対策で気をつけたいのは「防臭」を徹底することです。
体臭を他の匂いで打ち消そうとすると、その匂いが保護者を不快にさせる可能性があります。
具体的には、香水で匂いをつけるのではなく、防臭で匂いを抑えることを心がけましょう。
気を付けるべき匂いは
腋汗
口臭
足臭
スーツ(衣服)
あたりですね。
体全体の汗の匂いが気になる方は、制汗スプレーや
ウェットティッシュタイプの制汗グッズもオススメです。
スーツ(衣服)の匂いや、煙草を吸う人の口臭は自分では気づきにくいので、自覚が無くても対策をしておいたほうが良いでしょう。
まとめ:家庭訪問は「新しい出会いの場」だから一生懸命な教師の姿を
初めて訪問する家、初めて話をする保護者・・・春の家庭訪問は、ベテラン教師であっても緊張の連続です。
特に、新任教師や異動直後の教師は土地勘が無くて道に迷って時間に間に合わなかったりもして、保護者に迷惑をかけることも・・・
それでも一生懸命で前向きな姿勢を教師が見せ続ける限り、保護者はみんな優しいし温かい態度で迎えてくれます。
なぜなら、教師が思っている以上に保護者は
と思っているからです。
家庭訪問は、そんな保護者と教師の新しい出会いの場です。
これから1年間、手を携えて協力していく「子育てのパートナー」として良い出会いになるよう、私たち教師も一生懸命な姿を見せていきたいものです。
そのためにも、まずは準備を万端にして臨みたいものですね。
新任教師の先生方、頑張ってくださいね。