今回は、教員採用試験対策を進める上で誰もが手にする「過去問題集」について、種類やその特徴・メリット・使い方について、受験経験者の立場からお伝えします。
目次
過去問題集は「自治体別」と「全国版」がある
教員採用試験対策で「過去問題集に取り組む」というのは試験対策の方法の中では鉄板中の鉄板だと思われます。ただ、教採対策を進める上で、まず知っておくべきことは、過去問を集めている過去問題集は大きく分けて2種類あるということです。
です。
この2つは似ているようで全く違います。
使うならどちらがいいか?という質問を時々いただいたりしますが
結論は
です。
教員採用試験対策を効果的で効率の良いものにするためには、この2つの過去問題集の特徴を理解してうまく使い分けることが大切です。
過去問題集「自治体別」と「全国版」の特徴&メリット
次に、これら2種類の過去問題集の特徴やメリットについて説明したいと思います。
「自治体別」過去問題集
まずは「自治体別(都道府県別)過去問題集」について解説します。
「自治体別過去問題集」とは、名前の通り「自治体別」にまとめられた過去問題集です。
東京都版であれば東京都の過去問だけをまとめてくれています。
「自治体別」過去問題集の特徴
まず、代表的かつオススメの「自治体別(都道府県別)」過去問題集をひとつ紹介しておきます。
協同出版社の教員採用試験「過去問」シリーズです。
各自治体の「教職教養・一般教養」「面接・論作文」の過去問のリンク先はこちらです。
自治体
(都道府県) |
試験科目 | ||
北海道 札幌市 |
教職教養 | 面接・論作文 | |
青森県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
岩手県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
宮城県 仙台市 |
教職教養 | 面接・論作文 | |
秋田県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
山形県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
福島県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
茨城県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
栃木県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
群馬県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
埼玉県 さいたま市 |
教職教養 | 面接・論作文 | |
千葉県 千葉市 |
教職教養 | 面接・論作文 | |
東京都 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
神奈川県 横浜市 川崎市 相模原市 |
教職教養 | 面接・論作文 | |
新潟県 新潟市 |
教職教養 | 面接・論作文 | |
富山県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
石川県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
福井県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
山梨県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
岐阜県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
静岡県 静岡市 浜松市 |
教職教養 | 面接・論作文 | |
愛知県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
名古屋市 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
三重県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
滋賀県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
京都府 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
京都市 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
大阪府 豊能地区 大阪市 堺市 |
教職教養 | 面接・論作文 | |
兵庫県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
神戸市 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
奈良県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
和歌山県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
鳥取県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
島根県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
岡山県 岡山市 |
教職教養 | 面接・論作文 | |
広島県 広島市 |
教職教養 | 面接・論作文 | |
山口県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
香川県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
愛媛県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
高知県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
福岡県 福岡市 北九州市 |
教職教養 | 面接・論作文 | |
佐賀県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
長崎県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
熊本県 熊本市 |
教職教養 | 面接・論作文 | |
大分県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
宮崎県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
鹿児島県 | 教職教養 | 面接・論作文 | |
沖縄県 | 教職教養 | 面接・論作文 |
この自治体別問題集の特徴は主に以下の2つが挙げられます
- 特定の自治体の過去5年分の問題がそのまま載せられている
- 出題項目の一覧表がある
面接や論作文の過去問題集もあり、そちらでは過去に出た質問や事前に課されたワークシートなども掲載されています。
「自治体別」過去問題集のメリット
この「自治体別(都道府県別)の過去問題集」を使うメリットは
ということが挙げられます。
教員採用試験の問題は自治体によって、出題傾向・出題形式・難易度が全く違います。
例えば、出題形式だけでも
- 全問マーク式なのか
- 記述式なのか
- 論述式(例:500字以内で述べよ)なのか
- マーク式・記述式・論述式の併用なのか
- 併用であれば配点などの割合はどうなのか
と自治体によってそれぞれ違います。このことを、教員採用試験対策を具体的に進める前に知るだけで、これから進める対策の内容が変わってきます。
もうひとつ、教職教養試験を例にお話しておきます。
自分が受験を予定している自治体が
- 毎年教育史が出題されない傾向にある
- 出題形式は全問マーク式
- 難易度は低くて基本的な知識を中心に問われる
という傾向であるにもかかわらず、教育史にものすごく力を入れて
- コールバーグの道徳性の発達段階説
- マズローの欲求階層説
- ハヴィガーストの発達課題とか
といった教育史の用語を完璧に書き出せるように仕上げる…という対策を進めるのはどう考えても非効率的です。そこで、自分が受験を予定している自治体、特に第一希望で考えている自治体の過去問題集に触れておけば、そのような悲劇を事前に防止することもできます。
以上のような観点からも、自治体別の過去問題集というのは教員採用試験対策に欠かせないアイテムであると言えると思います。
個人的には、まずこの自治体別過去問題集を参考にして自分の向かうべき道を把握すべきだと思います。仮に全部解かなくてもサラっと目を通すだけでも、これから対策を進めていくうえで役に立つ情報をたくさん掴むことができると思います。
「全国版」過去問題集
次に、全国版過去問題集について解説します。
「全国版過去問題集」も名前の通り、日本全国の自治体(都道府県)で実施された教員採用試験の問題を集めたものです。
代表的かつオススメの問題集がこちら
時事通信出版局の「Hyper実践シリーズ・教職教養の過去問」です。
全国版過去問題集の特徴
この全国版過去問題集の特徴は
- 過去1年分のみだが、全国の自治体(都道府県)で実施された問題がそのまま掲載されている
- 各自治体別にデータが整理されている
こういうところが挙げられます。
北は北海道、南は沖縄まで基本的に日本全国の自治体で課された過去問題を全て押さえています。
そして
- 実施日
- 出題形式
- 出題分野
- 試験時間
- 問題数
- 過去問に関する情報の公開状況
- 傾向と対策の解説
といったデータを簡単にまとめてくれています。
全国版過去問題集のメリット
全国版過去問題集を使うメリットは
- 全国的なトレンド今出題されやすいホットな分野がどこなのかを把握することができる。
- 様々な形式の問題にあたることで実践力がつく
- 自治体別(都道府県別)で比較検討がしやすい
といったことが挙げられます。
例えば北から順番に解いていると
というように、姿かたちを変えて、実は同じことを聞いている問題があちこちで出題されていることに気づきます。つまり「同類の問題」に何度もあたることで「出やすいところ」を把握することができるのです。そして、解けなかったところを中心に復習をしながら北から南まで一巡すると、出題されやすい問題については だいたい解けるようになります。
また、イロイロな問題にあたることができますので、実戦練習をしながら覚えていくことができたり、・様々な出題形式への対応力を養えたりするというメリットもあります。
実は、自治体別の出題形式、傾向、難易度は絶対的なものではありません。ある年からガラっと変更されることもあります。そんな場合でも、それまでに全国問題集を通して様々な問題にあたっておけば、慌てずに過去の傾向と違った形式の問題にも対応できるはずです。
また、全国版過去問題集はそれぞれの自治体の過去問とともに、出題形式や出題分野などについてデータをまとめてくれています。そういったデータを参考にして「併願先」を検討することができます。
特に希望がなければ「第一希望」と似た傾向の自治体を併願したいところですよね?「全国版過去問題集」から得られる情報は、併願先の自治体を探す材料にもなるのです。
過去問題集は「自治体別」も「全国版」も両方に取り組むべき
よく「過去問は全国版に取り組むべき」という意見を耳にします。
しかし私は
だと思います。
確かに、全国版の過去問題集に取り組むことは
- 新学習指導要領のこのあたりが出やすい
- 学力調査に関する内容が出やすい
といった全国的なトレンドを押さえることができるという意味で、とても重要な対策ですし間違いはありません。そして、それだけをして合格を勝ち取った方もたくさんいらっしゃると思います。
ただ、自治体別の傾向を押さえる…ということは全国版だけでは補えません。自治体によっては毎年絶対に出題される…もう伝統レベルなっている出題項目があるような自治体もあります。
例えば人権関係の分野は、絶対に毎年出題されるという自治体があります。そんな自治体独自の傾向・形式・難易度のクセを把握するためにも、自治体別の過去問題集に取り組まれることもオススメしておきたいと思います。
教員採用試験対策での「過去問題集」の取り組み方
では最後に「自治体別(都道府県別)」と「全国版」の過去問題集の活用方法について簡単に触れておきます。
私の経験から、以下のような手順で取り組まれることを提案します。
①【はじめ】自治体別過去問題集に取り組む
教員採用試験対策を始めるにあたって、まずは自分が受験を予定している自治体(特に第一希望)の「自治体別過去問題集」に取り組んでみましょう。
ここでの目的は
です。
問題を解くだけではなく、掲載されている解説や分析データにも目を通して「出題傾向・出題形式・難易度」を確認しましょう。
②【メイン】全国版の過去問題集に取り組む
自治体別過去問題集から、受験する予定の自治体(特に第一希望)の「出題傾向・出題形式・難易度」が把握出来たら、次は「全国版の過去問題集」に取り組みましょう。
ここでの目的は
- 「全国的なトレンド」を把握すること
- 「様々な出題形式に触れて「実践力」を養うこと
です。
個人的には、過去問題集を解きながら、出題されているところや自分が間違えたところなどを中心にチェックをする。次に、その内容をサブノート形式の問題集や参考書に書き込みをして、書き込んだところを中心に覚えていく。
という作業をしていました。
もちろん、人によっては全国過去問題集のみを何度も繰り返し取り組んで、必要事項を覚えていった方も少なくないようです。このあたりは、自分に合った学習スタイルで進められることをオススメします。
③【直前期】自治体別問題集に取り組む
直前期には、改めて受験を予定している自治体の「自治体別過去問題集」に取り組んでみましょう。
ここでの目的は
です。
制限時間を設けて時間内に解くことや、合格ラインの点数を取ることにこだわって、実戦さながらの練習をしましょう。
教採過去問題集はそれぞれの特徴やメリットを理解して上手に活用しよう
今回は、教員採用試験の対策でよく使われる過去問題集について、解説しました。
過去問題集には「全国版」と「自治体別(都道府県別)」あることと、その特徴やメリットから使い方までをできるだけコンパクトにまとめてみたつもりです。
もちろん人にはそれぞれ好みや取り組みやすいやり方があります。
「自分に合ったやり方」で取り組むことがイチバンですが、他人の意見を鵜呑みにして「全国版だけでOK」「自治体別だけでOK」ではなく、両方の特徴やメリットを理解して上手に使い分けていくことが大切だと思います。
みなさんが少しでも効率の良い対策を進められ、来夏の教員採用試験で合格されることを願っています。
頑張ってくださいね。
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