教員採用試験で出題される教職教養に関する資料を穴埋め形式で学習できるよう、まとめました。
ここでは
生徒指導提要
に関する問題を掲載しており、具体的には以下の内容を問題にしています。
- 生徒指導の定義・目的
- 生徒指導の構造
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穴埋め問題 ~文科省「生徒指導提要」より~
文部科学省「生徒指導提要」の全文はコチラ。
以下、出題される可能性の高い部分の穴埋め問題です。
生徒指導の定義
生徒指導の定義
学校教育の目的は、「[人格の完成]を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」(教育基本法第1条)を期することであり、また、「[個人の価値]を尊重して、その能力を伸ばし、[創造性]を培い、自主及び自律の精神を養う」(同法第2条第2号)ことが目標の一つとして掲げられています。この学校教育の目的や目標達成に寄与する生徒指導を定義すると、次のようになります。
生徒指導の定義
生徒指導とは、児童生徒が、社会の中で[自分らしく生きる]ことができる存在へと、[自発的・主体的]に[成長や発達する過程]を支える教育活動のことである。なお、生徒指導上の課題に対応するために、必要に応じて指導や援助を行う。
生徒指導は、児童生徒が自身を[個性的存在]として認め、自己に内在しているよさや可能性に自ら気付き、引き出し、伸ばすと同時に、社会生活で必要となる[社会的資質・能力]を身に付けることを支える働き(機能)です。したがって、生徒指導は学校の教育目標を達成する上で重要な機能を果たすものであり、学習指導と並んで学校教育において重要な意義を持つものと言えます。
生徒指導の目的
生徒指導の目的
生徒指導の目的は、教育課程の内外を問わず、学校が提供する[全ての教育活動]の中で児童生徒の[人格]が尊重され、[個性の発見]と[よさや可能性の伸長]を児童生徒自らが図りながら、多様な[社会的資質]・[能力]を獲得し、自らの資質・能力を適切に行使して[自己実現]を果たすべく、自己の幸福と社会の発展を児童生徒自らが追求することを支えるところに求められます。
生徒指導の目的
生徒指導は、児童生徒一人一人の[個性の発見]と[よさや可能性の伸長]と[社会的資質・能力の発達]を支えると同時に、自己の幸福追求と社会に受け入れられる[自己実現を支える]ことを目的とする。
生徒指導において発達を支えるとは、児童生徒の心理面([自信・自己肯定感]等)の発達のみならず、学習面([興味]・[関心]・[学習意欲]等)、社会面([人間関係]・[集団適応]等)、進路面([進路意識]・[将来展望]等)、健康面([生活習慣]・[メンタルヘルス]等)の発達を含む包括的なものです。
また、生徒指導の目的を達成するためには、児童生徒一人一人が[自己指導能力]を身に付けることが重要です。児童生徒が、深い[自己理解]に基づき、「何をしたいのか」、「何をするべきか」、主体的に問題や課題を発見し、自己の目標を選択・設定して、この目標の達成のため、自発的、自律的、かつ、他者の主体性を尊重しながら、自らの行動を決断し、実行する力、すなわち、「[自己指導能力]」を獲得することが目指されます。
児童生徒は、学校生活における多様な他者との関わり合いや学び合いの経験を通して、 学ぶこと、生きること、働くことなどの価値や課題を見いだしていきます。その過程において、自らの生き方や人生の目標が徐々に明確になります。学校から学校への移行、学校から社会への移行においても、主体的な選択・決定を促す[自己指導能力]が重要です。
生徒指導の構造(分類)
2軸3類4層構造
生徒指導は、児童生徒の課題への対応を時間軸や対象、課題性の高低という観点から類別することで、構造化することができます。生徒指導の分類を示すと、図 1 のようになります。
図1生徒指導の分類
(文部科学省「生徒指導提要」より引用)
(1) 生徒指導の2軸
児童生徒の課題への対応の時間軸に着目すると、図 1 の右端のように2分されます。
① 常態的・先行的(プロアクティブ)生徒指導
日常の生徒指導を基盤とする発達支持的生徒指導(→ 1.2.2 発達支持的生徒指導)と組織的・計画的な課題未然防止教育(→ 1.2.3 課題予防的生徒指導:課題未然防止教育)は、積極的な先手型の常態的・先行的(プロアクティブ)生徒指導と言えます。
② 即応的・継続的(リアクティブ)生徒指導
課題の予兆的段階や初期状態における指導・援助を行う課題早期発見対応(→1.2.4 課題予防的生徒指導:課題早期発見対応)と、深刻な課題への切れ目のない指導・援助を行う困難課題対応的生徒指導(→ 1.2.5 困難課題対応的生徒指導)は、事後対応型の即応的・継続的(リアクティブ)生徒指導と言えます。
(2) 生徒指導の3類
生徒指導の課題性(「高い」・「低い」)と課題への対応の種類から分類すると、図 1 のように以下の 3 類になります。
① 発達支持的生徒指導
[ 全ての児童生徒 ]の発達を支えます。
② 課題予防的生徒指導
[ 全ての児童生徒 ]を対象とした課題の[ 未然防止 ]教育と、課題の前兆行動が見られる一部の児童生徒を対象とした課題の[ 早期発見と対応 ]を含みます。
③ 困難課題対応的生徒指導
深刻な課題を抱えている[ 特定の児童生徒 ]への指導・援助を行います。
生徒指導の4層
図 2 は、図 1 の2軸3類に加えて、生徒指導の対象となる児童生徒の範囲から、全ての
児童生徒を対象とした第1層「発達支持的生徒指導」と第2層「課題予防的生徒指導:課
題未然防止教育」、一部の児童生徒を対象とした第3層「課題予防的生徒指導:課題早期
発見対応」、そして、特定の生徒を対象とした第 4 層「困難課題対応的生徒指導」の4層
から成る生徒指導の重層的支援構造を示したものです。以下で、具体的に各層につい
て説明します。
図2 生徒指導の重層的支援構造
(文部科学省「生徒指導提要」より引用)
1.2.2 発達支持的生徒指導
発達支持的生徒指導は、特定の課題を意識することなく、[ 全ての児童生徒 ]を対象に、[ 学校の教育目標 ]の実現に向けて、[ 教育課程内外の全ての教育活動 ]において進められる生徒指導の基盤となるものです。発達支持的というのは、児童生徒に向き合う際の基本的な立ち位置を示しています。すなわち、あくまでも児童生徒が自発的・主体的に[ 自らを発達 ]させていくことが尊重され、その発達の過程を学校や教職員がいかに支えていくかという視点に立っています。すなわち、教職員は、児童生徒の「[ 個性の発見 ]とよさや可能性の伸長と[ 社会的資質・能力 ]の発達を支える」ように働きかけます。
発達支持的生徒指導では、日々の教職員の児童生徒への挨拶、声かけ、励まし、賞賛、対話、及び、授業や行事等を通した[ 個と集団への働きかけ ]が大切になります。例えば、自己理解力や自己効力感、コミュニケーション力、他者理解力、思いやり、共感性、人間関係形成力、協働性、目標達成力、課題解決力などを含む[ 社会的資質 ]・[ 能力 ]の育成や、自己の将来をデザインする[ キャリア教育 ]など、教員だけではなくスクールカウンセラー(以下「SC」という。)等の協力も得ながら、[ 共生社会の一員 ]となるための[ 市民性教育 ]・[ 人権教育 ]等の推進などの日常的な教育活動を通して、全ての児童生徒の[ 発達を支える働きかけ ]を行います。このような働きかけを、学習指導と関連付けて行うことも重要です。意図的に、各教科、「特別の教科 道徳」(以下「道徳科」という。)、総合的な学習(探究)の時間、特別活動等と密接に関連させて取組を進める場合もあります。
1.2.3 課題予防的生徒指導:課題未然防止教育
課題予防的生徒指導は、課題未然防止教育と課題早期発見対応から構成されます。課題未然防止教育は、[ 全ての児童生徒 ]を対象に、生徒指導の諸課題の[ 未然防止 ]をねらいとした、[ 意図的 ]・[ 組織的 ]・[ 系統的 ]な教育プログラムの実施です。
具体的には、いじめ防止教育、SOSの出し方教育を含む自殺予防教育、薬物乱用防止教育、情報モラル教育、非行防止教室等が該当します。[ 生徒指導部 ]を中心に、SC等の専門家等の協力も得ながら、[ 年間指導計画 ]に位置付け、実践することが重要です。
第 1 章 生徒指導の基礎
1.2.4 課題予防的生徒指導:課題早期発見対応
課題早期発見対応では、課題の[ 予兆行動 ]が見られたり、問題行動のリスクが高まったりするなど、[ 気になる一部 ]の児童生徒を対象に、深刻な問題に発展しないように、[初期の段階]で諸課題を発見し、対応します。例えば、ある時期に成績が急落する、遅刻・早退・欠席が増える、身だしなみに変化が生じたりする児童生徒に対して、いじめや不登校、自殺などの深刻な事態に至らないように、早期に[ 教育相談 ]や[ 家庭訪問 ]などを行い、実態に応じて迅速に対応します。
特に、早期発見では、いじめアンケートのような質問紙に基づく[ スクリーニングテスト ]や、SCやスクールソーシャルワーカー(以下「SSW」という。)を交えた[ スクリーニング会議 ]によって気になる児童生徒を早期に見いだして、指導・援助につなげます。
また、早期対応では、主に、[ 学級・ホームルーム担任 ]が[ 生徒指導主事 ]等と協力して、機動的に課題解決を行う[ 機動的連携型支援チーム ]で対応することとなります。しかし、問題によっては、生徒指導主事や生徒指導担当、教育相談コーディネーター (教育相談担当主任等)や教育相談担当、学年主任、特別支援教育コーディネーター、養護教諭、SC、SSW 等の教職員が協働して[ 校内連携型支援チーム ]を編成し、組織的なチーム支援によって早期に対応することが望まれます[*9] 。
1.2.5 困難課題対応的生徒指導
いじめ、不登校、少年非行、児童虐待など[ 特別な指導 ]・[ 援助 ]を必要とする特定の児童生徒を対象に、校内の教職員(教員、SC、SSW 等)だけでなく、校外の[ 教育委員会 ]等(小中高等学校又は特別支援学校を設置する国公立大学法人、学校法人、大学を設置する地方公共団体の長及び学校設置会社を含む。)、警察、病院、児童相談所、NPO 等の関係機関との連携・協働による課題対応を行うのが、[ 困難課題対応 ]的生徒指導です。困難課題対応的生徒指導においては、[ 学級・ホームルーム担任 ]による[ 個別の支援 ]や学校単独では対応が困難な場合に、生徒指導主事や教育相談コーディネーターを中心にした[ 校内連携型支援チーム ]を編成したり、校外の専門家を有する関係機関と連携・協働した[ ネットワーク型支援チーム ]を編成したりして対応します。
児童生徒の背景には、児童生徒の[ 個人の性格や社会性 ]、学習障害・注意欠陥多動性障害・自閉症などの発達障害といった[ 個人的要因 ]、児童虐待・家庭内暴力・家庭内の葛藤・経済的困難などの[ 家庭的要因 ]、また、友人間での人間関係に関する要因など、様々な要因が絡んでいます。学校として、このような課題の背景を十分に理解した上で、課題に応じて管理職、生徒指導主事、学級・ホームルーム担任、養護教諭、SC、SSW 等の専門家で構成される[ 校内連携型支援チーム ]や、関係機関等との連携・協働による[ ネットワーク型支援チーム ]を編成して、[ 計画 ]的・[ 組織 ]的・[ 継続 ]的な指導・援助を行うことが求められます。
生徒指導と言うと、課題が起き始めたことを認知したらすぐに対応する([ 即応 ]的、あるいは、困難な課題に対して組織的に粘り強く取り組む([ 継続 ]的というイメージが今も根強く残っています。しかし、いじめの重大事態や暴力行為の増加、自殺の増加などの喫緊の課題に対して、起きてからどう対応するかという以上に、どうすれば起きないようになるのかという点に注力することが大切です。
いじめを例にすると、いじめの疑いのある段階からの発見やいじめを認知した段階で迅速な対処を行う[ 課題早期発見対応 ]、そして、いじめ解消に向けた[ 困難課題対応的生徒指導 ]が重要であることは言うまでもありませんが、SNS によるいじめなど、教職員に見えにくいいじめへの対応の難しさを考えると、全ての児童生徒を対象に前向きな取組を行うことが求められます。人権意識を高める観点から、例えば、国語の授業で他人を傷つけない言語表現を学習する。あるいは、市民性教育の観点から、ネットでの誹謗中傷的書き込みの他者への影響等を、道徳科や特別活動等で学習する。こうした取組は、教職員が日常的に児童生徒に働きかける[ 発達支持的生徒指導 ]([ 常態 ]的と言えます。同時に、いじめが起きないように積極的にいじめに関する[ 課題未然防止教育 ]([ 先行 ]的を、[ 児童会・生徒会 ]と協力して展開することも大切です。
全ての児童生徒を対象にした、人を傷つけない[ 言語表現 ]の学習、[ 情報モラル ]教育、[ 法 ]教育といった[ 発達支持的生徒指導 ]は、児童生徒の実態と合ったものであれば、いじめの抑止効果を持つことが期待されます。また、課題予防的生徒指導([ 課題早期発見対応 ]や[ 困難課題対応的生徒指導 ]を通して、起こった事象を特定の児童生徒の課題として留めずに、学級・ホームルーム、学年、学校、家庭、地域の課題として視点を広げて捉えることによって、全ての児童生徒に通じる指導の在り方が見えてきます。
このように、[ 発達支持的生徒指導 ]や課題予防的生徒指導([ 課題未然防止教育 ]の在り方を改善していくことが、生徒指導上の諸課題の[ 未然防止 ]や[ 再発防止 ]につながり、[ 課題早期発見対応 ]や[ 困難課題対応的生徒指導 ]を広い視点から捉え直すことが、[ 発達支持的生徒指導 ]につながるという円環的な関係にあると言えます。その意味からも、これからの生徒指導においては、特に常態的・先行的([ プロアクティブ ]な生徒指導の創意工夫が一層必要になると考えられます。
はぜひご利用ください。