今回は、2022年度(2023年度採用選考)公立小学校教員採用試験の都道府県別(自治体別)の倍率について、ランキングや推移、今後の予想など、いくつかの視点でまとめてみました。

受験先、特に併願先を考える上での参考にしてもらえたらと思います。
過去分と比較したり、推移が分かりやすかったりするよう、2020年度(2021年採用選考)・2021年度(2022年採用選考)の倍率も併記しています。
目次
2022年度・教員採用試験(小学校)の全国平均倍率は?

近年、教員採用試験の倍率が低下していると言われています。
特に小学校の倍率低下は凄まじく、2021年(令和3年)度の教員採用試験(小学校)の全国平均倍率は2.5倍で、2020年の全国平均倍率が2.7倍・・・なので、依然として低下傾向にあることがわかります。

基本的に、教員採用試験のような選抜試験において「倍率(競争率)3倍以下」は、優秀な人材を選抜することが難しくなる「危険水域」だと言われています。全国平均がその危険水域を下回っているわけですから、その深刻さが分かります。
しかし
採用側の「危険水域」は受験者側には「大チャンス」
です。なかなか合格できずに苦労されている方は、このチャンスをモノにしたいところですね。
詳しい教員採用試験の全国的な倍率の傾向などは、文部科学省の令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイントを参照してください。
2021年度 小学校・教員採用試験 倍率ランキング

特に教員として働く自治体に強いこだわりが無いのであれば「できる限り低倍率の自治体で受験する」というのも、合格をゲットするための作戦として間違いではありません。
そこで今回は、2023年の教員採用試験を受験される予定のみなさんに参考にしていただけるよう、2022年に実施された教員採用試験(公立小学校)の倍率を、自治体(都道府県)別にランキングにして比べてみることにします。
・倍率が低い自治体ランキング

まず、倍率の低い自治体ワースト10を紹介します。
小学校教員採用試験・低倍率ワースト10(2022年度)
2022年 | 2021年 | 2020年 | |
①熊本県 | 1.2 | 1.3 | 1.8 |
①大分県 | 1.2 | 1.3 | 1.4 |
③北海道 | 1.3 | 1.4 | 1.3 |
③秋田県 | 1.3 | 1.3 | 1.8 |
③山形県 | 1.3 | 1.5 | 1.5 |
③富山県 | 1.3 | 1.6 | 1.6 |
③佐賀県 | 1.3 | 1.3 | 1.4 |
③長崎県 | 1.3 | 1.4 | 1.4 |
⑨青森県 | 1.4 | 1.9 | 2 |
⑨宮城県 | 1.4 | 1.7 | 1.7 |
⑨福島県 | 1.4 | 1.6 | 1.7 |
⑨福岡県 | 1.4 | 1.3 | 1.4 |
⑨鹿児島県 | 1.4 | 1.7 | 2.1 |
9位が同率で4自治体ありましたので、13自治体をピックアップしました。
倍率の最も低いランキング1位は
「熊本県」「大分県」
でした。
それ以外の顔ぶれをみると、九州地方や東北地方の自治体が目立ちます。
トップ10は、何れの自治体も
1倍台
です。
出願した受験生の中に当日欠席や受験辞退をする人がいることを考えると、実質倍率はこれらの数字よりもさらに低くなっているはずです。
また、倍率の推移にも注目してみてください。
青森県と鹿児島県以外は、過去3年にわたって倍率が1倍台が続いています。これらの自治体は、来年度も余程のことが無い限り低倍率のままである可能性が高いと考えられます。

とは言え、先ほど紹介した「危険水域」の3倍・・・どころか1倍台の自治体は他にもたくさんあります。
以下のような自治体が2022年度の教員採用試験(小学校)で倍率が1倍台でした。
小学校教員採用試験 競争率1倍台の自治体(2022年度)
2022年 | 2021年 | 2020年 | |
熊本県 | 1.2 | 1.3 | 1.8 |
大分県 | 1.2 | 1.3 | 1.4 |
北海道 | 1.3 | 1.4 | 1.3 |
秋田県 | 1.3 | 1.3 | 1.8 |
山形県 | 1.3 | 1.5 | 1.5 |
富山県 | 1.3 | 1.6 | 1.6 |
佐賀県 | 1.3 | 1.3 | 1.4 |
長崎県 | 1.3 | 1.4 | 1.4 |
青森県 | 1.4 | 1.9 | 2 |
宮城県 | 1.4 | 1.7 | 1.7 |
福島県 | 1.4 | 1.6 | 1.7 |
福岡県 | 1.4 | 1.3 | 1.4 |
鹿児島県 | 1.4 | 1.7 | 2.1 |
東京都 | 1.5 | 2.4 | 2.1 |
新潟県 | 1.5 | 1.8 | 2.3 |
熊本市 | 1.5 | 1.9 | 2.5 |
千葉・千葉市 | 1.6 | 1.8 | 1.8 |
山梨県 | 1.6 | 1.8 | 1.8 |
相模原市 | 1.7 | 2.1 | 3 |
島根県 | 1.7 | 1.7 | 2.2 |
山口県 | 1.7 | 2 | 1.5 |
愛媛県 | 1.7 | 1.8 | 1.9 |
福岡市 | 1.7 | 1.6 | 1.9 |
埼玉県 | 1.8 | 2.1 | 1.7 |
川崎市 | 1.8 | 2.1 | 2.9 |
岐阜県 | 1.8 | 1.8 | 2 |
宮崎県 | 1.8 | 1.5 | 1.9 |
新潟市 | 1.9 | 2 | 2.4 |
広島県・広島市 | 1.9 | 1.6 | 1.6 |
北九州市 | 1.9 | 1.7 | 1.8 |
実に、30もの自治体での教員採用試験(小学校)が1倍以下の競争率になってしまっています。
・倍率が高い自治体ランキング

逆に、倍率の高かった自治体をランキングで整理してみました。
小学校教員採用試験・高倍率トップ10(2022年度)
2022年 | 2021年 | 2020年 | |
①高知県 | 6.7 | 8.1 | 6 |
②京都市 | 5.5 | 4.3 | 3.9 |
③兵庫県 | 4.5 | 4.2 | 4.9 |
④徳島県 | 4 | 3.8 | 3.6 |
⑤奈良県 | 3.9 | 5 | 5 |
⑥沖縄県 | 3.3 | 4.1 | 4.7 |
⑦栃木県 | 3.2 | 2.5 | 2.6 |
⑦浜松市 | 3.2 | 3.4 | 3.3 |
⑨群馬県 | 3.1 | 3.9 | 3.4 |
⑨静岡県 | 3.1 | 2.7 | 2.8 |
⑨香川県 | 3.1 | 3.3 | 2.8 |
2022年度の公立小学校の教員採用試験で、最も倍率が高かった自治体は「高知県」でした。それ以外は「京都市」「兵庫県」「奈良県」といった関西地方の自治体が目立ちます。

とは言え、正しく選抜試験の性質が確保されると言われている「5倍」を超えているのは、わずか上位2自治体のみです。
全国都道府県市別の倍率一覧表(2022・2021・2010年版)

それでは最後に、2022年度に実施した全国の都道府県別(自治体別)の倍率を一覧表でまとめたものをお見せします。
探しやすいよう、北から順番に整理しています。
また、こちらも倍率の推移が分かるよう、2020年からの3年分を横並びで表示しています。
ご自身が第一希望で考えている自治体、併願先で考えている自治体の倍率を確認してみてください。
全国都道府県・小学校教員採用試験 競争率一覧(2022年度)
2022年 | 2021年 | 2020年 | |
北海道 | 1.3 | 1.4 | 1.3 |
札幌市 | 2.9 | 3.2 | 2.6 |
青森県 | 1.4 | 1.9 | 2 |
岩手県 | 2.3 | 2.6 | 2.3 |
宮城県 | 1.4 | 1.7 | 1.7 |
仙台市 | 2.2 | 2.2 | 3 |
秋田県 | 1.3 | 1.3 | 1.8 |
山形県 | 1.3 | 1.5 | 1.5 |
福島県 | 1.4 | 1.6 | 1.7 |
茨城県 | 2.2 | 2 | 1.8 |
栃木県 | 3.2 | 2.5 | 2.6 |
群馬県 | 3.1 | 3.9 | 3.4 |
埼玉県 | 1.8 | 2.1 | 1.7 |
さいたま市 | 2.4 | 2.6 | 2.6 |
千葉・千葉市 | 1.6 | 1.8 | 1.8 |
東京都 | 1.5 | 2.4 | 2.1 |
神奈川県 | 2.1 | 2.6 | 2.9 |
横浜市 | 2 | 2.4 | 2.1 |
川崎市 | 1.8 | 2.1 | 2.9 |
相模原市 | 1.7 | 2.1 | 3 |
新潟県 | 1.5 | 1.8 | 2.3 |
新潟市 | 1.9 | 2 | 2.4 |
富山県 | 1.3 | 1.6 | 1.6 |
石川県 | 2.4 | 2.5 | 2.5 |
福井県 | 2.7 | 3.2 | 2.9 |
山梨県 | 1.6 | 1.8 | 1.8 |
長野県 | 2.7 | 2.6 | 3.1 |
岐阜県 | 1.8 | 1.8 | 2 |
静岡県 | 3.1 | 2.7 | 2.8 |
静岡市 | 2.4 | 2.2 | 2.5 |
浜松市 | 3.2 | 3.4 | 3.3 |
愛知県 | 2.2 | 2.5 | 3 |
名古屋市 | 2.5 | 2.8 | 3.8 |
三重県 | 2.7 | 3.1 | 4.3 |
滋賀県 | 2.4 | 2.7 | 2.7 |
京都府 | 2.6 | 3 | 3.4 |
京都市 | 5.5 | 4.3 | 3.9 |
大阪府 | 3 | 3.2 | 3.4 |
豊能地区 | 2.8 | 3.7 | 3.2 |
大阪市 | 2.8 | 2.9 | 2.3 |
堺市 | 3 | 4.6 | 5.7 |
兵庫県 | 4.5 | 4.2 | 4.9 |
神戸市 | 2.9 | 6.1 | 6.9 |
奈良県 | 3.9 | 5 | 5 |
和歌山県 | 2.6 | 2.6 | 2.6 |
鳥取県 | 2.4 | 2.2 | 3 |
島根県 | 1.7 | 1.7 | 2.2 |
岡山県 | 2.8 | 2.8 | 3.5 |
岡山市 | 2.5 | 3.1 | 3.3 |
広島県・広島市 | 1.9 | 1.6 | 1.6 |
山口県 | 1.7 | 2 | 1.5 |
徳島県 | 4 | 3.8 | 3.6 |
香川県 | 3.1 | 3.3 | 2.8 |
愛媛県 | 1.7 | 1.8 | 1.9 |
高知県 | 6.7 | 8.1 | 6 |
福岡県 | 1.4 | 1.3 | 1.4 |
福岡市 | 1.7 | 1.6 | 1.9 |
北九州市 | 1.9 | 1.7 | 1.8 |
佐賀県 | 1.3 | 1.3 | 1.4 |
長崎県 | 1.3 | 1.4 | 1.4 |
熊本県 | 1.2 | 1.3 | 1.8 |
熊本市 | 1.5 | 1.9 | 2.5 |
大分県 | 1.2 | 1.3 | 1.4 |
宮崎県 | 1.8 | 1.5 | 1.9 |
鹿児島県 | 1.4 | 1.7 | 2.1 |
沖縄県 | 3.3 | 4.1 | 4.7 |
2023年度の教員採用試験も低倍率化は継続しそう・・・

今回、ご紹介しているランキングデータは2022年に実施した教員採用試験に関する倍率です。
この記事をご覧の方の多くが

と思われているのではないでしょうか。
2023年度の公務員試験は全体的に難化する予想がされています。
感染症による自粛ムードの影響で民間企業の不安定さや採用が抑えられる影響で、新卒生の安定志向(公務員受験志向)が強まるだろう・・・と予想されるからです。
しかし、私だいぶつは

と思っています。
むしろ、低倍率化がさらに加速して、場合によっては1倍を切る「定員割れ」を起こす自治体が出てくることもありうる・・・と予想しています。
その理由としては以下の4点が挙げられます。
- 教採は教員免許の所持、または”免許取得見込み”が受験条件である(思いつきでは受験できない)
- 教員の多忙さが改善されていない(新任退職者や病気休職者の増加による不人気)
- 現場の教員不足が解消されていない(募集定員の維持or増加の可能性大)
- サラリーマン(副業禁止などの拘束感)としての働き方を望まない人の増加(不人気傾向の加速)
特に、近年はSNSの普及で、マスコミからの発信が無くても教師のブラックな職場環境を感じ取ることができます。
その空気感から、2023年度も新卒の学生を中心に

といった傾向は変わらないと思われます。
また過去3年分の倍率推移から変化を見てみると、最も倍率がアップした自治体が京都市の
+1.2
(2021年の4.3倍 ⇒ 2022年の5.5倍)
2021年度の教採では大阪市の
+0.6
(2020年の2.3倍 ⇒ 2021年の2.6倍)
が最高です。
こいういったデータをもとに考えると、低倍率化の要因が大幅に変わらなければ、どの自治体も急激に倍率がアップして難化することはなさそうです。
どれだけ難化しても、競争率は前年比+1.0程度で落ち着くでしょう。
つまり

「2023年度の教採も超低倍率」
と考えてよいのではないでしょうか。
この大チャンスを活かして合格を勝ち取ろう

2000年前後に比べると、今の教員採用試験は信じられないくらいに合格しやすい状況です。
たとえ、教師の仕事が「大変だ」と言われても、教師の仕事に魅力を感じている方にとっては、今ほどその希望を叶えられるチャンスはありません。
そして、現在マスコミやSNSなどを中心に「教師の仕事はブラックだ!」と発信され、志願者が年々減り続ける中、自治体も現場も少しずつですが変わってきているようです。

むしろ、これから良くなっていくに違いないと考えれば、今の状況は「大チャンス」と言えるでしょう。
5年後6年後もこの低倍率の状態が続くとは限りません。
転職することが「アタリマエ」になりつつある現代。この低倍率のチャンスを利用して、まずは教職の経験を積んでみる・・・というのもアリではないでしょうか。
新卒の方はもちろん、転職や復職希望の方々も、ぜひ受験を検討してみてはいかがですか?
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